東北大学大学院医学系研究科 生物化学分野

BACH1によるフェロトーシスの制御

Ferroptosis is controlled by the coordinated transcriptional regulation of glutathione and labile iron metabolism by the transcription factor BACH1. 20200222

フェロトーシスは鉄依存性の細胞死で、元々はRAS依存性がんで発見され、がんや変性疾患などへの関与が注目されつつあります。西澤博士らはBACH1が鉄代謝関連遺伝子やグルタチオン生合成系遺伝子を抑制することでフェロトーシスを促進することを見いだし、さらに心筋梗塞の病態にもBACH1によるフェロトーシス促進が関わることを示しました。論文のデータは掲載号の表紙を飾りました。

Nishizawa H. et al, Ferroptosis is controlled by the coordinated transcriptional regulation of glutathione and labile iron metabolism by the transcription factor BACH1. J. Biol. Chem. 295, 69-, 2020

Inner Myeloidに関する総説論文を発表しました

To be red or white: lineage commitment and maintenance of the hematopoietic system by the "inner myeloid" 20191108

最近のRNA-sequenceなどの報告に基づいて造血幹細胞分化のモデルや課題をまとめ、ミエロイド分化を基本として考えれば多彩な細胞形成機構を転写因子ネットワークで理解できることを論じました。そして、ミエロイド系遺伝子抑制におけるBACHの役割をまとめました。

Kato H and Igarashi K, To be red or white: lineage commitment and maintenance of the hematopoietic system by the "inner myeloid", Haematologica 104, 1919-, 2019

BACHに関する日本語総説論文を発表しました

「環境変化に応じた造血系の恒常性維持におけるBach因子群の役割」 20191108

造血幹細胞の分化の基軸はミエロイド分化にあることを転写因子ネットワークから考察し、ミエロイド以外の細胞への分化、そして感染時などにおける恒常性維持に広くBACHが関わることをまとめました。

加藤浩貴、五十嵐和彦:環境変化に応じた造血系の恒常性維持におけるBach因子群の役割(臨床免疫・アレルギー科, V72, 535-, 2019)

hemeによるBACH1の制御

COLLABORATIVE PAPER IS OUT, 20190528

細菌感染に応答してヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1)の発現が誘導され、生体防御に作用することが注目をあつめています。本論文では、細菌成分のリポ脂質がマクロファージ表面受容体と結合すると細胞内で遊離ヘム量が上昇し、ヘムが転写因子BACH1に結合し不活性化することで、HO-1遺伝子の発現抑制が解除されることを見いだしました。ヘムのシグナル作用が明らかになりつつあります。

本研究は、ハノーバー大学医学部Stephan Immenschuh教授、パリ大学医学部Roberto Moterlini博士らとの共同研究の成果です。

Sudan, K., Vijayan, V., Madyaningrana, K., Gueler, F., Igarashi, K., Foresti, R., Motterlini, R. and Immenschuh, S. TLR4 activation alters labile heme levels to regulate BACH1 and heme oxygenase-1 expression in macrophages. Free Radic. Biol. Med. In press (2019)

hemeによるBACH1の制御

COLLABORATIVE PAPER IS OUT, 20190528

転写因子BACH1の活性は、補欠分子ヘムが直接結合することで阻害されます。BACH1にはヘムを結合するCPモチーフが6ヶ存在しますが、本研究では、最もC末端に位置するCPモチーフが天然変性領域(二次構造をとらない)にあり、ヘムとの5配位結合に関わること、しかし、ヘムが結合しても天然変性状態のままであることを見いだしました。ヘムによるBACH1の機能制御はこれまで知られているヘムタンパク質とは異なり、天然変性状態から別の天然変性状態に変えることにあると予想されます。その実体は今後の課題です。

本研究は、医工学研究科村山和隆准教授、帝人ファーマ株式会社瀬川圭氏らとの共同研究の成果です。

Segawa, K., Watanabe-Matsui, M., Matsui, T., Igarashi, K. and Murayama, K. Functional Heme Binding to the Intrinsically Disordered C-Terminal Region of Bach1, a Transcriptional Repressor. Tohoku J. Exp. Med. 247, 153-159 (2019)

hemeによるBACH1の制御

COLLABORATIVE PAPER IS OUT, 20190528

転写因子BACH1の活性は、補欠分子ヘムが直接結合することで阻害されます。BACH1にはヘムを結合するCPモチーフが6ヶ存在しますが、本研究では、DNA結合ドメインのN端側に位置するCPモチーフ3ヶの機能を物理化学的手法で解析しました。この3ヶのCPモチーフは一連の天然変性領域(二次構造をとらない)にあり、それぞれがヘムとの5配位結合に関わること、ヘム結合状態でも天然変性状態をとり続けることが明らかになりました。さらに、これらCPモチーフのシステインがタンパク質内相互作用に係わり、ヘム結合により分子内相互作用が変化する可能性が示されました。また、ヘムによるBACH1の転写抑制能の解除は、主にこれら3ヶのCPモチーフが関わることも明らかになりました。ヘムのシグナル作用が明らかになりつつあります。

本研究は、医工学研究科村山和隆准教授、帝人ファーマ株式会社瀬川圭氏らとの共同研究の成果です。

Segawa, K., Watanabe-Matsui, M., Tsuda, K., Matsui, T., Shirouzu, M., Igarashi, K. and Murayama, K. Biophysical characterization of heme binding to the intrinsically disordered region of Bach1. Eur. Biophys. J. in press (2019)

藻類における新規mTOR標的の同定

COLLABORATIVE PAPER IS OUT, 20190528

シアニディオシゾンは単細胞藻類の一種で、バイオ燃料原としても注目を集めています。TORシグナル伝達系を阻害することでデンプン含量が10倍以上増えることが知られていましたが、その仕組みは不明でした。今回の研究では、リン酸化タンパク質の網羅的解析を質量分析を用いて行い、デンプン合成に関わる酵素がTOR経路でリン酸化され、デンプン含量が制御されることを見いだしました。

本研究は、東京工業大学今村壮輔准教授、東北大学生命科学研究科東谷篤志教授らとの共同研究の成果です。島弘季博士が質量分析を担当しました。

Pancha, I., Shima, H., Higashitani, N., Igarashi, K., Higashitani, A., Tanaka, K. and Imamura, S. Target of rapamycin (TOR) signaling modulates starch accumulation via glycogenin phosphorylation status in the unicellular red alga Cyanidioschyzon merolae. Plant J. 97, 485-499 (2019)

造血幹細胞・前駆細胞の運命決定機構

BACH因子が赤血球系細胞の分化を促すことを示した論文を発表しました, 20181012

これまで私たちの研究室では、ヘムにより抑制されるというユニークな特徴を持つ転写因子BACH1及びBACH2がリンパ球系細胞とミエロイド系細胞 (顆粒球やマクロファージなど) の共通の前駆細胞でミエロイド系遺伝子を抑制することで正常なリンパ球系細胞の分化を促すことを明らかにしてきました。今回の研究ではさらに本知見を発展させ、BACH1とBACH2が赤血球系細胞とミエロイド系細胞の共通の前駆細胞でミエロイド系遺伝子を抑制することで正常な赤血球系細胞の分化を促すことを明らかにしました。また、BACH1とBACH2は各種感染性刺激により抑制される為、環境変化に応じた造血幹・前駆細胞の分化調節に重要な役割を果たす可能性が考えられました。さらに、代表的な造血器腫瘍の一つである骨髄異形成症候群ではBACH2の発現が有意に低下している所見が認められました。

本研究から、BACH1やBACH2の機能低下が貧血などの血液疾患の原因の一つである可能性が示唆され、新たな治療標的になりうるものと期待されます。

本研究は加藤浩貴博士が生物化学分野に在籍中に行った研究で、血液免疫病学分野張替秀郎教授、京都大学医学系研究科小川誠司教授、イタリアのパヴィア大学Mario Cazzola教授らとの共同研究の成果で、Nature Immunology誌に発表されました。

Kato, H., Itoh-Nakadai, A., Matsumoto, M., Ishii, Y., Watanabe-Matsui, M., Ikeda, M., Ebina-Shibuya, R., Sato, Y., Kobayashi, M., Nishizawa, H., Suzuki, K., Muto, A., Fujiwara, T., Nannya, Y., Malcovati, L., Cazzola, M., Ogawa, S., Harigae, H. and Igarashi, K. Infection perturbs Bach2- and Bach1-dependent erythroid lineage ‘choice’ to cause anemia. Nature Immunol. 19, 1059-1070 (2018)

Other Discoveries

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