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東北大学医学系研究科 生物化学分野

成果等

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成果等

生物化学分野の成果情報です。

2018年1月9日
ほ乳類細胞におけるSAM量調節機構の一端を明らかにした論文を発表しました

細胞内におけるメチル化反応は、ヒストン、DNAおよびRNAの修飾を介したエピゲノム制御や、脂質などの生体物質産生に関わる、きわめて重要な反応であると考えられています。これらのメチル化は多種多様なメチル基転移酵素によって触媒されますが、その反応のほとんどでメチル基の供与体として利用されるのが、S-アデノシルメチオニン(SAM)と呼ばれる物質です。細胞内SAM量が過不足なく維持されることは、細胞内メチル化反応が適正に進行するために重要であると考えられます。この研究では、哺乳類細胞でSAMを合成する酵素であるメチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2A(MAT2A)の発現量が、細胞内SAM量に応じてフィードバック調節されるしくみを明らかにしました。
具体的には、細胞内SAMが減少したとき、MAT2AのメッセンジャーRNA(mRNA)が安定化され発現量が増加すること、このmRNA安定化には、3’ 側非翻訳領域(3’ UTR)に複数存在するヘアピン構造に生じるN6-メチルアデノシン(m6A)修飾が重要であること、さらに、このm6A修飾を行うメチル基転移酵素がMETTL16であることとともに、m6A結合タンパク質YTHDC1が関与することを示し、哺乳類細胞においてSAM量を適切に保つための機構の一つを見い出しました。本研究は当研究室島弘季博士らによる研究成果で、「Cell Reports」にて発表されました。

MAT2A mRNA量の調節を介したSAM量の調整

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2017年9月19日
肺胞蛋白症発症機構の1つとしてのT細胞と肺胞マクロファージにおけるBach2機能の重要重要性を論文に発表しました

肺胞マクロファージは、二型肺胞上皮細胞で合成・分泌される肺胞サーファクタントを貪食・処理する機能を持ち、肺胞内の肺胞サーファクタントの量を一定に保っています。我々は以前、転写因子Bach2欠損マウスでは肺胞マクロファージの脂質代謝機能が異常になり、肺胞蛋白症を発症することを報告しました(JEM, 2013)。本研究では、Bach2遺伝子欠損マウスでは肺胞マクロファージ特異的な遺伝子発現パターンを失う一方で、脾臓赤脾髄マクロファージや腹腔マクロファージに特異的な遺伝子発現パターンを示しており、ChIP-seqの結果からBach2はIl6を含む多くの炎症関連遺伝子や、SpiCなどを含む脾臓赤脾髄マクロファージ特異的な遺伝子に結合してその発現を抑制していることを明らかにしました。また、これまでBach2は転写抑制因子であると考えられていましたが、Bach2は多くのヒストン遺伝子に結合し、それら遺伝子の発現を促進していることも明らかとなりました。
我々は、インターフェロンγなどのサイトカインが肺胞マクロファージの遺伝子発現異常をもたらすことを発見しました。Bach2はT細胞において炎症性サイトカインの発現を抑制し、一方でそれらサイトカインは肺胞マクロファージにおいてBach2の発現を誘導することが明らかとなり、これらの結果から、Bach2は、肺胞マクロファージにおいて、炎症反応に応答した機能喪失を抑えるguardianとして機能していると考えられました。さらに、抗体を用いてCD4陽性T細胞を枯渇させたところ、肺胞蛋白症が治癒することを見出し、T細胞を標的とした治療が肺胞蛋白症の新規治療となりうることを発見しました。
本研究は渋谷里紗博士(現・呼吸器内科)らによる研究成果で、「The Journal of biological chemistry」にて発表されました。

肺胞マクロファージにおけるBach2の機能

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2017年5月7日
門脈枝結紮における肝再生時の変化を多層オミクス解析によって俯瞰的に捉えた論文を発表しました

肝臓は再性能を有する臓器として知られており、肝臓の切除後に予測される残肝の肥大を促す門脈塞栓術は、術後の肝不全の予防処置として広く施行されています。肝臓切除後の肝再生に関する知見はこれまで多く報告がされていますが、門脈塞栓術後の肝再生に関する研究報告は少なく、その詳細な機序については不明でした。この研究では、門脈結紮モデルマウスの再生肝について、エピゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームそれぞれの網羅的なデータを多層的に解析し、肝再生時に多くの遺伝子にヒストンH3K4トリメチル化修飾が加わり、転写因子Foxm1が肝再生に重要な細胞周期関連遺伝子を活性化することを見出しました。また、mRNA発現変動とタンパク質発現プロファイルを比較することで、肝再生時に転写レベルでの発現制御と、翻訳後修飾の段階での制御が働いている可能性を示唆しました。門脈塞栓後の肝再生時の網羅的な情報を解析したこの研究から、今後効率的な肝再生を可能にする治療法や因子の同定につながることが期待されます。本研究は佐藤好宏博士(2015年度博士課程修了)らによる研究成果で、「The Journal of biological chemistry」にて発表されました。

肝再生のメカニズム

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2017年3月29日
Bach2欠損マウスにおける好酸球増加メカニズムを明らかにした論文を発表しました

私たちは転写因子Bach2の欠損マウスの脾臓、骨髄、肺胞洗浄液などで好酸球が増加していることを発見しました。しかし、野生型マウスとBach2欠損マウスの骨髄細胞を共移植したマウスでは、それぞれのドナー由来の好酸球数に有意な差は認められませんでした。この結果からBach2欠損マウスで認められた好酸球増加の増加は、細胞自律的ではなく、IL-5などのサイトカインの影響によるものではないかと推測しました。そこで、我々はIL-5を分泌する主な細胞であるヘルパー2型T細胞の影響を評価するために、リンパ球を欠損するRag2欠損マウスとBach2欠損マウスを掛け合わせた2重欠損(dKO)マウスを作製し、好酸球数を確認しました。その結果、dKOマウスでは好酸球の増加は認められず、Bach2単独欠損マウスでの好酸球の増加はリンパ球依存的であることが示唆されました。近年Bach2欠損マウスのCD4陽性T細胞は、ヘルパー2型T細胞の分化が亢進し、IL-5などのサイトカインの発現が上昇していることが報告されています。実際に血清中のIL-5濃度を測定したところ、Bach2欠損マウスでは野生型マウスと比較して優位に増加していました。以上から、Bach2欠損マウスではヘルパー2型T細胞が活性化することで、IL-5の分泌が亢進し、その結果好酸球の増加が誘導されることが示されました。本研究は佐藤勇樹さん(博士課程)らが実施した研究成果に基づいており、「The Tohoku journal of experimental medicine」にて発表されました。

Bach2欠損マウスにおける好酸球増加のメカニズム

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2017年3月10日
細菌感染時の白血球分化におけるBach2とC/EBPβの働きを示した論文を発表しました

私たちの血液中を流れるマクロファージやリンパ球などの白血球は病原体に対する防御を担っており、造血幹細胞や多能性前駆細胞から分化します。これら分化前の未熟な細胞は、細菌感染に応答して細菌を貪食するマクロファージへの分化が優先的になり、獲得免疫であるリンパ球の分化が抑えられることが知られていましたが、その機構は不明でした。今回の研究では、造血幹細胞や多能性前駆細胞において互いに抑制し合う二つの転写因子Bach2とC/EBPβが、マクロファージコロニー刺激因子 (M-CSF)受容体などの遺伝子の発現を調節することによって、リンパ球とマクロファージの分化を制御していることを示しました。細菌感染時の白血球分化の仕組みの一端を明らかにしたこの発見は、感染症の重篤化や慢性炎症など様々な免疫疾患の詳細な理解につながることが期待されます。本研究は伊藤亜里博士(当ラボにて2012年度博士課程修了後2015年3月までポスドク、現東北大学加齢医学研究所遺伝子導入研究分野所属)らが実施した研究成果に基づいており、「Cell Reports」にて発表されました。

細菌感染時の転写制御

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2017年3月9日
渋谷里紗博士(2015年度博士課程修了)が七星賞最優秀賞に選ばれました

渋谷里紗博士(2015年度博士課程修了)が七星賞最優秀賞に選ばれました。東北大学は「門戸開放」の理念のもと、日本で初めて女子学生を受け入れた大学です。東北大医学部は昨年、開設百周年を迎えました。七星賞はその記念事業の一環として、優秀な女子大学院学生が自信を持ち、諦めることなく研究者キャリアの道を歩むことを奨励し、医学・医療等の分野で活躍する女性リーダー育成の一翼を担うことを目的として設置されました。次世代の女性リーダーとして、渋谷さんの今後ますますの活躍に期待します。受賞、おめでとうございました。
*ちなみに北斗七星が当医学部のロゴマークのモチーフであるところから「七星賞」と名付けられたようです。

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2017年3月1日
鉄欠乏時における赤血球でのBach1の機能に関する論文を発表しました

従来、鉄欠乏性貧血は赤血球において重要なヘモグロビンのもととなる鉄の不足により起こるものとされてきましたが、赤血球の前駆細胞(骨髄赤芽球注)自身の鉄欠乏への応答機構には不明な点が多く残っていました。本研究では、鉄欠乏性貧血は単なる材料(鉄)の不足により起こるだけではなく、鉄欠乏が赤血球成熟過程でグローバルなDNAのエピジェネテック変化及び遺伝子発現変動をもたらす事や、ヘムによって抑制性に制御されるというユニークな特徴を持つ転写因子Bach1が鉄欠乏に応答してヘモグロビン合成時のヘムとグロビンのバランスを調整することを発見しました。本研究によって、世界で最も頻度の高い疾患の一つである鉄欠乏性貧血の病態の理解がさらに進むことが期待されます。本研究は小林匡洋博士(現・血液免疫科)の大学院博士課程で実施した研究成果および加藤浩貴さん(博士課程4年)の研究成果に基づいており、「Haematologica」にて発表されました。

鉄欠乏時におけるBach1の転写制御

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2017年3月1日
Nguyen Chi Longさんと渋谷里紗博士が「優秀ポスター賞」を受賞しました

2月15日から17日にかけて行われたにおいて、Nguyen Chi Longさん(博士課程1年)と渋谷里紗博士(2015年度博士課程修了)が「ポスター賞」を受賞しました。本会は東日本大震災からの復興支援の一環として、アメリカのNational Institutes of Health (NIH)が2013年3月に開催したNIH-Tohoku University-JSPS Symposiumを発展させたシンポジウムです。この中で、Longさんは「The significance of patio-temporal control of SAM synthesis by methionine adenosyltransferase 2A in epigenetic gene expression」、渋谷博士は「Bach2 keeps homeostasis in lung by maintaining the function of alveolar macrophages in inflammatory environment」といったタイトルでポスター発表を行いました。受賞、おめでとうございます!

“Longさん、渋谷さん「ポスター賞」受賞"

“Longさん、渋谷さん「ポスター賞」受賞"

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2016年12月28日
島 弘季博士が「優秀ポスター賞」を受賞しました。

島弘季博士が第39回日本分子生物学会年会において、「優秀ポスター賞」を受賞しました。受賞演題は「S-アデノシシルメチオニン合成酵素MAT2Aの発現は3’UTRアデニンメチル化が介するmRNA安定性により制御される」でした。本賞は、研究発表ならびに質疑応答の内容と将来性および発展性が期待される研究に贈られます。おめでとうございます。

“島

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2016年10月26日
「鉄代謝と遺伝子制御」についてのレビューを発表しました。

渡部(松井)美紀(日本学術振興会RPD特別研究員)らは、実験医学 34:2475-2480 2016 (NO.15:77-82)にて「鉄代謝と遺伝子制御」というタイトルでレビューを発表しました。

生体内で鉄およびヘムは、タンパク質と結合し、活性中心を形成し電子伝達や酸素運搬といった必須の機能を担います。一方で、生体内の鉄・ヘム濃度が上昇すると、酸化ストレスやDNA損傷などを引き起こし、細胞にとって強い毒性を示す側面もあります。従って、鉄やヘムを効率良く安全に利用するために、その動態に関わる遺伝子群は厳密な制御を受けます。本稿では、細胞内におけるヘム・鉄濃度変化に伴う、遺伝子発現制御に関する最近の知見を概説するとともに、我々が転写因子Bachの研究を通して新しく発見した「ヘムによる天然変性タンパク質の制御」の機構について説明しています。
図.配位および配位ヘム結合を持つBach2の天然変性領域の構造変化模式図

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